ISBN:406256839X 文庫 溝口 敦 講談社 2004/04 ¥820
  十年一昔、という言葉がある。
  この言葉を聞いて、ネットをされている方ならば、
 まずIT業界、パソコンや接続速度などのハード環境を
 思い浮かべるであろうが、本書は、現在では消費者金融
 と名を変え、その会長格の人間が軒並み長者番付に載る
 ほどの隆盛を極めている旧・サラ金業者が、「草創・急
 成長期」からの転換を余儀なくされた前後の、武富士を
 始めとした有名サラ金業者の展開を記したノンフィクシ
 ョンである。
  この転換は、ひとえに83年11月における「サラ金規制
 法」制定及び出資法改正による。実際は、バブル崩壊以
 降の方が自己破産者数がひどいのだが、当時、サラ金地
 獄で多くの事件が起き、こういった法整備が起きたのだ。

  しかし、当時の凄まじさは金利を見ただけでも唖然と
 する。
  上限109.5%。ヤミ金融などではない。大手サラ金の上
 限なのである。年利100%を超えているわけだから、
 まさに「倍々ゲーム」なのである。
  高校数学を習った人間ならば、高校1年生の時、数列
 の導入で、生徒に興味を持たせる為に、「お母さんに
『月の小遣い3000円じゃなくて良い。1円から初めて31日
 まで倍にしていってくれるだけいい』って言ってみな」
 といわれた事があるだろう。これこそ倍々ゲームであり、
「1円」という響きに騙されて承諾してしまうと、31日後
 は2^30すなわち、10桁10億単位となり、泣くに泣けない
 事態となるのである。
  数学のこの話は、実際起きている事ではないので、
 体の悪いブラックジョークで済ませられるのだが、83年
 11月までのサラ金貸付は、現実に、この倍々ゲームを
 行っていた。
  すなわち、年利100%において、債務者が返済しな
 ければ、元利均等でも1円貸付で30年後は10億単位の借金
 に膨れ上がることになるのである。そして、勿論貸付は
 当たり前だが、1円や10円などの矮小な金額ではない。
  業者側からすれば、これほど旨い話はないのだが、
 先物取引のように、一方が得をすれば、他方は必ず損を
 するわけなので、債権者が得をすればするほど、債務者
 の皺寄せは甚大なものとなる。事実、83年あたりのサラ
 金にまつわる事件は深刻な社会問題へと化したらしいのだ。
  そういう経緯により、83年11月に改正され、上限40.0
 04%へと引き下げられ、さらにバブル崩壊後の慢性的構
 造不況の中、00年6月さらなる改正で上限29.2%へと引き
 下げられた。
  だが、本当は03年に貸金業法と出資法見直しが見送ら
 れさらなる上限金利引き下げは06年まで先送りされたの
 だ。
  
  私なりの概略は以下の通りなんですが、それにしても
 貧乏人の私は、そもそも借金は死んでもするな、という
 家庭に育った家なので、たとえ1%の金利でも鬼のよう
 に高いと考える、ある意味トヨタ方式(?)な人間なん
 ですが、幼少期、サラ金で一気に家がなくなり、引っ越
 していった友達がいたのですが、これも上限年利109.5%
 で瞬く間に納得。
  ITバブルの時もそうだったのですが、何事も、法整
 備が進んでいないときの金額設定って、整備後から見る
 と、かなりムチャだと思う場合が多いですね。
  そりゃ、子供の頃、親から怖いくらいに、借金だけは
 するな、といわれるのも、無理はありませんな。
 
  時は移って現代。ゴールデンタイムでのソフトな宣伝
 や、昔に比べると大幅に安くなった金利により、認知度
 が高くなった消費者金融。しかし、確か、貸金業者が貸
 付を用意する為に銀行で借りる仕込み金利は3%程度な
 ので、その差は約10倍になるわけですな…。

  というか、銀行って…(以下、自主規制)

  む〜ん、金融って恐ろしい。
  私は、家族が生活できて、年に一回贅沢できるくらい
 のお金があれば、多くは求めません。求めませんから、
 お金に左右される人生だけは送りたくないものですな。
  って、こんな所が法・経済に適性が無い証でしょう
 か?(苦笑)

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