past-time(102):

2004年7月15日 Past-time
 アイツなんか大嫌いだ

 いつも無愛想で そのくせ 目立ちたがり屋で

 いつも私の気持ちを逆撫でする

 私は アイツをいじめてやろうと思い

 名が無いラブレターを こっそりアイツの机に忍ばせた

 

 案の定 普段は賢そうに見えて 実はマヌケなアイツは

 いつになく真面目な顔ぶりでやってくる

 それが より一層 私の気持ちをワクワクさせる

 やっぱバカだ

 さぁて お楽しみはこれからだ

 私は 待ち合わせ場所の木の茂みから どんぐり爆弾を
 
 ありったけ めいっぱい 投下しようと振りかぶった

 
 
 きゃっ

 しまった 張りきり過ぎた

 私は体勢を崩し 木の幹にかろうじてつかまる

 アイツは お化け屋敷のうらめし人形が

 いきなり空から降ってきた時のように 

 一瞬だじろいだけど 私とわかって 不敵な笑みを浮かべた

 

 あれぇ なんで オマエ ここにいるの

 いかにも ははぁ といった顔つきだ

 ちくしょう ちくしょう ちくしょう

 私の 完璧な計画は 最後の詰めで しくじってしまった

 何よ ちょっと 助けなさいよ

 私が鉄棒のようにぶらさがっている真下で
 
 アイツは異様に 散らばっているどんぐりを
 
 まじまじと眺めている

 

 
 あ パンツ丸見え

 どんぐりを2,3個拾って アイツは私の方を眺める

 ちょ ちょっと 見んな 見るんじゃねえ

 いやぁ 良い眺めぢゃ こりゃこりゃ

 コイツは 好々爺のように ほっほっほと笑う

 私の恥ずかしさと怒りは頂点に達した

 高所恐怖症だったはずなのに 

 コイツへの気持ちで 頭が一杯になって

 不思議とその感覚は無かった

 てめぇ この野郎

 私は 彼めがけて 特攻する

 

 命中

 ただし吸収

 コイツは 私の攻撃を何事も無く 胸で受け止めた

 おお 大丈夫か

 彼は 無愛想に私の背中とひかがみを握る

 ちがーう そういうつもりじゃなーい

 しっかし重いなぁ 最近 太ったんじゃねえの

 

 コイツの態度と言葉に 私はわなわな震えだす

 そして コイツの胸の中にいる状態で 

 私は コイツの頭をべしべしたたき出す

 痛ぇ 何するんだ

 当たり前だ 痛くなるように殴ってんだ

 なんか殴っていくうちに 私は ぐっと感情が
 
 込み上げてきて 何故か 涙がぽろぽろ出てきた

 
 おいおい 何やってんだ

 珍しく慌てる コイツ

 私は 恥ずかしいやら 悔しいやら

 オマエがバカだからだよ

 バカ アホ マヌケ

 ひとしきり 彼の頭を 

 ぺしぺし ごんごん 殴って泣いた後 

 私は コイツのほっぺを むにゅっと引き伸ばし

 しわくちゃの顔で コイツの変な顔を笑った後

 抱き上げられた格好のまま

 コイツの頬に 口付けをした


 コイツは 眉を吊り上げて 

 いつに無く 困った顔をしていた

 う 腕が い 痛い

 コイツは 最後まで しらばっくれていた

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